トロンボーン伊藤の
ホーンセクションよもやま話集

その1:ホーンセクションとは?

バンドに馴染みの薄い読者のために、 まず最初に、「ホーンセクション」とはなにか? という基本的な内容から考えてみることにする。 かくいう筆者も「ホーンセクション」の定義など考えたこともなかったので、 自ら勉強しながら執筆している。

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ホーンセクションの定義

まずはじめに、バンドマンの間で当然のように使っている 「ホーンセクション」 という言葉の定義について考えてみよう。 この言葉を「ホーン」「セクション」の2つの単語にわけて辞書を引いてみる。 すると、最も意味の近そうな説明として、以下のような説明が載っている。

  ホーン:らっぱ
  セクション:部隊
要するに、辞書の上では 「らっぱ隊」 という意味で説明されているらしい。 しかし、バンドマンの間では、 もうちょっと広い意味で使っているように思われる。 筆者が思うに、多くのバンドマンは、この言葉を、

バンドの中で数人で構成される管楽器群

という定義で用いているように思う。 ここでいう管楽器とは、たいていの場合、 サックス、トランペット、トロンボーン を指すのではないかと思う。他の管楽器といえば、 たまにサックス奏者がフルートを持ち替えて使うのを見かける程度であり、 めったに使われることはないように思う。

ちなみに、ホーンセクションの形態(人数、構成楽器など) には、これといった定型はない。 かくいう筆者も、じつにさまざまな形態のホーンセクションに参加している。 ワタシがいままでに参加したバンドのホーンセクションを見ても、

などなど、実にバンドによってマチマチな編成を持っている。

ところで、「ホーンセクション」のことを「ブラスセクション」 と呼ぶ人も多い。 あるメイリングリストで、こんな発言があった。

「ホーン(Horn)」と「ブラス(Brass)」の違いはなんでしょうか?

筆者の理解では、この両者は、 どちらも「金管楽器」 という意味だと思っている。 ちなみに「ホーン」を辞書で引くと、「角らっぱ」という意味がある。 これはホルン(主にフレンチホルンなど)の原形という意味を含んでいると思われる。 また「ブラス」を辞書で引くと「真鍮」という意味がある。 これは金管楽器全般の素材という意味を含んでいると思われる。 いずれにしても、「ホーン」も「ブラス」も、その定義は曖昧なので、 両者をあまり区別せずに同義語として解釈して差し支えなさそうである。

読者の意見:
「ホーン」と「ブラス」の違いは、 「ブラス」は金管楽器で、「ホーン」は管楽器全体を指してると考えてます。 サックスのことをブラスということはまずないでしょうし、 楽器のベルの部分を総称してホーンじゃないかと。

読者の意見:
というより、オーソドックスに金管木管で考えるのはどうでしょう? 金管がブラス。金管+木管がホーン。

読者の意見:
音響の国家試験の問題集の中に、
Q.フルバンドの楽器編成で、管楽器群は、一般にブラスセクションと呼ばれている。(○ or ×で解答)
というのがあったそうです。

筆者より:
を、新説が登場しましたね :-) しかしベルの部分を総称するのなら、サックスは「ホーン」 だけどフルートは「ホーン」じゃないことになるのかな? う〜ん、難しい....(^^;;; というわけで(どういうわけだ)他の説もお待ちしてます。
ワタシが思うに、「ホーン」のほうが非常に定義が曖昧だと思うんですよね。 なぜなら、クラシック音楽で Horn といったら、 フレンチホルンなどの特定楽器を指す人のほうが圧倒的に多いから。

読者の意見:
「ホーン(Horn)」や「ブラス(Brass)」という言葉は、 木管楽器がバンドに入っているいじょう、僕は使いません。 あくまでも「管楽器」という言葉を使います。 (ちょっとダサいけどね)
ただ、現在ではサックスもフルートも、 そのほとんどが真鍮(ブラス)で出来ていますよね(多分)。 ということは、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ピッコロ以外は、 「ブラス」でも良いのではないか?っとも思いますけど。 あくまでも、最初に作られた素材により、 木管、金管を分けているらしいので、 今時、木のサックスなんて見たこと無いですね。 (ん?金管木管の話題では無かった)

筆者より:
実は私も、「管楽器」という日本語を頻繁に使います。 理由は同じですね。ホーンとかブラスとかいう言葉が曖昧だからです。


ホーンセクションの音楽的役割

では、複数の管楽器が同時に演奏するホーンセクションは、 主にどのような役割を果たしているのだろうか? 思いつくものを列挙してみる。

当然のことながら、 ホーンセクションには管楽器の長所を生かした役割が与えられる。 では管楽器の長所や特徴は何か? というと、 筆者は以下のような点を特筆したいと考えている。 もちろん、管楽器ならではの弱点もある。 以下のような弱点が現れてしまうような場面では、 ホーンセクションは使われにくい。 これを読んでいる方々の中で、 もしホーンセクションを使った楽譜を書く機会がありましたら、 上記の点をぜひ思い出して書いていただければと思います。 なにとぞよろしくお願いします。


ホーンセクションを目立ち度から分類する

さて、ホーンセクションの入った音楽にもいろいろある。 ここでは筆者なりに、ホーンセクションの入っている音楽を、 その重要度や目立ち度から、独断と偏見で4種類に分類してみた。

その1 唄やメロディ楽器が主役で、 ホーンセクションがいなくてもよさそうなんだけど(笑) いるならいるでカッコいい、という音楽。 たくさんあるのでキリがない。 筆者が参加したコピーバンドでやった音楽に限定して例示する。 日本人では山下達郎、古内東子、杏里、角松敏生あたり。 外国人では Swing Out Sisters、Chaka Kahn、Patti Austin など。 これらはみんなソロシンガーの曲なので、 ホーンセクションが目立つことはあまり期待してはイケナイのだ(笑)。
その2 あくまでも主役は唄やメロディ楽器なんだけど、 ホーンセクションが妙にカッコよくて目立つ音楽。 これもたくさんあるのでキリがない。 日本人では米米クラブが代表じゃないかと思う。 知る人ぞ知るところでは、SMAPのホーンセクションは超カッコいい。 Sing Like Talking あたりにも、ホーンセクションが非常にいい曲があった。 外国人では Incognito、Earth Wind & Fire、Chicago、Stevie Wonder など。 インストでも松岡直也、Mezzofolte など、いろいろ思いつく。
その3 唄やメロディ楽器と、ホーンセクションと、どっちが主役なんだ? というくらいホーンセクションが目立つ音楽。 日本人では東京スカパラダイスオーケストラが代表格か。 他には The Thrill など。解散した TOPS なんかもこれに入るかなぁ。 古くは往年のバンド、スペクトラムというのもあった。 外国人では有名なところでは Tower Of Power か。 20年以上前には、 トランペット4本がハイトーンを吹きまくる伝説のバンド Chase なんてのもあった。
その4 カンペキにホーンセクションが主役な音楽。 小さなビッグバンド(ちょっと矛盾のある呼び方ですね) と言ってもいいかもしんない。 まだまだこういう編成のメジャーなバンドは少ないのだが、 たとえば JB's horn section とか 村田陽一 Solid Brass あたり。 個人的には、 こういう編成の音楽がもっともっとメジャーになってほしいと思っている。

そういえば、複数の管楽器が主役になっているインスト音楽の中でも、 The Crusaders とか Brecker Brothers あたりを「ホーンセクション」 と呼ぶことは少ない。 これらのバンドの管楽器群は、「セクション(=一隊)」というより、 「ソロ楽器の集合体」としての性格が強いから、ではないかと思う。


ホーンセクションの歴史的背景

複数の管楽器が一隊となって同一フレーズを吹くスタイルは、 クラシック音楽では何百年も前からある姿であるが、 ポピュラー音楽ではいつごろからメジャーになったのだろうか。 筆者の認識では、 1940年代の Glenn Miller や Benny Goodman などが率いるビッグバンド でメジャーになったのではないか、という気がする。 しかし、ビッグバンドというのは最初から管楽器が主役である。 ボーカルやメロディ楽器を主役とする形態の音楽で、 その盛り上げ役としてホーンセクションが大々的に使われるようになったのは、 いつごろのことなのだろうか?

残念なことに、筆者は 1950年代、1960年代の音楽に疎い。 しかし筆者の乏しい知識でも、Beatles の後期のナンバー、たとえば 1967年頃に発表された "All You Need Is Love" や "Magical Mystery Tour" などは、 すでに現在のホーンセクションとほとんど同様な考え方で 管楽器が用いられていることがわかる。 もし、これらの楽曲よりさらに古い曲で、 現在のホーンセクションのような管楽器の使い方が見られる曲目があったら、 ぜひ例示してください。よろしくお願いします。

ホーンセクション全盛期といったら、なんといっても1970年代 だと思う。 上記の表の中でも、Chicago, Chase, Earth Wind & Fire, Stevie Wonder, Quincy Jorns など、 多くのアーティストが、華やかなホーンセクションを従えて 1970年代に大活躍している。 日本でもスペクトラムが出現したのが1970年代のことだった。 ちなみに筆者は1970年代は小学生だった。 自宅にはラジカセさえなかった。 ワタシが吹奏楽部に入部してトロンボーンを吹きはじめ、 音楽に目覚めたのは、すでに1980年のことであった。 いまにして思えば、 なぜ筆者は1970年代から音楽観賞を趣味としなかったのか。 筆者が人生をやり直したい時期のひとつである(ホントかよ?)。 余談になるが、 当時の日本中の吹奏楽部の新入部員は、 宇宙戦艦ヤマトとスペクトラムにあこがれて管楽器を志したらしい (やや誇張アリ)。

逆に 1980年代は、ある意味ではホーンセクションの受難期 であるような気がする。 この時期に転機を迎えたバンドは非常に多い。 Chicago や Earth Wind & Fire, Stevie Wonder などにも電子音楽の波が押し寄せ、 ホーンセクションは用いられなくなった。 いまにして思えば、 当時の流行はシンセサイザーに集約されていたような気もする。 楽器店に行けば、誰もが Van Halen の "Jump" と Bon Jovi の "Runaway" のイントロを弾いていたではないか(ワタシだけか?)。

そして 1990年代はホーンセクション復活期 であると筆者は信じている。 Acid Jazz などの新しい流行が、ホーンセクションの活躍する Incognito などの新しいバンドを次々にヒットさせた。 日本でもスカやサルサなどの流行で、 管楽器の存在感が見直されているような気がする。 かくいう筆者も、 大学生だった1980年代にはギターやシンセを練習したものだが、 就職した1990年代にはおとなしくトロンボーンに戻っている (単なる流行追っかけミーハー野郎だという話もある)。

というわけで、ホーンセクションに関する一般論はこのくらいにして、 アマチュアトロンボーン吹きの筆者が どのようにホーンセクションに参加しているか、 ということを次のページで述べたい。

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