トロンボーン伊藤の
ホーンセクションよもやま話集

その15:管楽器奏者のレコーディング風景

筆者は今まで、「ホーンセクションのトロンボーン奏者」 としては3回ほどレコーディングに参加した経験がある。 このページでは、その経験談の中から、

After Hours

というバンドの 1st Album "Talkin' Dish" のホーンセクション録音風景について軽く回想してみる。

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全員一斉に録音する? 1人ずつ録音する?

このアルバムのホーンセクションの収録は、朝9時から夜9時まで確保された部屋で、 できるだけ1日で全部録音したい、というプレッシャーの中で始まった。 このようなタイトなスケジュールの都合もあって、このレコーディングでは、 2本のマイクを囲んで3人一斉に演奏する、というスタイルをとった。

偶然なのか何なのか、筆者のいままで3回のホーンセクション録音は、 すべて「全員一斉に録音する」というスタイルをとっていた。しかし、 それはあくまでもスケジュールや録音機材などの関係で必然的にそうなっただけのことであり、 「全員一斉」ではなく「1人ずつ」という録音スタイルがあってもいいはずである。 しかし筆者には「1人ずつ録音」の経験はない。 「1人ずつ」というスタイルでホーンセクションの録音をされた方、 ぜひ体験談をお寄せくださいませ。 (あいかわらず他力本願なホームページ作成ぶり)

説明しなくても想像できると思うが、全員一斉の録音というのは、結構大変である。 あいかわらず理系人な説明方法で恐縮だが、 仮に 3回に 1回くらいの割合で失敗するフレーズがあったとしよう。 言い換えれば、このフレーズは、

1人で録音するなら 3回に2回は成功する。

ということもできる。 このように聞くと、なんとなく楽勝なフレーズのように思える。 しかし! このフレーズは数字の上では、

3人で録音して 3人とも成功する確率は 8/27 である。

このように聞くと、最初の 1回はゼッタイ失敗するように聞こえてしまう(爆)。 そして、恐ろしいことに、 3人のうち 1人だけが失敗しても、3人全員やり直しである。 極端な話、10回やらされて自分は9回成功しているのに〜! ってことだってあるかもしれない。 そう考えると、全員一斉の録音というのは、とても非効率な作業のように聞こえてしまう。

あれ? 全員一斉に録音するのが
ホントにスケジュール上で得策なのか?

なんだかわからなくなってしまいそうだ。おまけに、

だいたい、1本ずつ録音したほうが、
その後の編集に融通が利くではないか。

う〜ん、ここまで書いてしまえば、もう明らかである。 ホーンセクションは1本ずつ録音したほうが効率的だ。そうに違いない。 うむ〜、次回のレコーディングは1本ずつにしてもらおう。ちゃんちゃん。

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.... という結論で締めくくるわけにはいかない。実は筆者は 「全員一斉録音」こそがホーンセクション録音の醍醐味 と思っているのだ。なぜかと言うと、

「全員で吹けばテンションが違う」

ということを信じているからである。 もはや、効率だの便利だの、と言った運営上や技術上の話とは別次元の見解である。

ホーンセクションの威勢よく輝かしいフレーズ、 あれを1人で吹いても3人で吹いても同じテンションで吹けるだろうか。 筆者は、同じテンションで吹ける人をオトナだと思う(笑)。 やっぱり、あれは集団で束になって吹くのがイチバン爽快なのだ。 そして、演奏者が爽快だと思う演奏は、間違いなくカッコいい演奏なのだ (アマチュア的発言炸裂)と筆者は信じている。 そんなわけで、もし After Hours がホーンセクションを1本ずつ収録したら、 きっとアルバムのカラーはガラリと変わったんじゃないだろうか? と筆者は遠い眼で回想するのであった。


ホーンは生物だ

最初にどうでもいいことだが、このタイトル、 「いきもの」と読んでも「なまもの」と読んでもいいが、 「せいぶつ」とは読まないで欲しい (失礼しました)。

After Hours のアルバムは、イントロからエンディングに至るまで、 切り貼りをせずに収録されている。 どういう意味かというと、1番と2番で楽譜が同じだからと言って、 1回ぶんだけ収録して1番と2番の両方に使う、などということはしない、 という意味である。ちゃんと1番は1番用に、2番は2番用に2回録音している。

録音は4小節とか8小節を単位として演奏したことが多かった。 もっと細かい単位、すごい時には「8分音符1個だけ録り直し」 なんてこともあったような気がする。 まったく最近のデジタル録音技術は、恐ろしいものがある。 あの技術があったら、音程やリズムも自在に修正できてしまうではないか。 しかし「ナマ演奏に固執する After Hours」に限って、 そんな修正はしていないので念のため(いやホントに)。

1曲の中での録音順番を入れ換えたことはある。例えば

  1. 1番の唄の伴奏
  2. 2番の唄の伴奏
  3. イントロ
  4. 1番終了後の間奏
  5. エンディング
というような感じの順番で録音をしたことはある。 しかし、ホーンは生物である。 仮にイントロとエンディングが同じフレーズだったとして、

たった30分前に収録したイントロの音色と、
いま収録中のエンディングの音色が、なんか違うぞ。
いくらなんでも、ちょっと不自然じゃないか?

ということが起こる。あるいは、

イントロの演奏よりエンディングの演奏のほうが、
カッコいいよねぇ。このままじゃ、イントロが見劣り
しちゃうよねぇ。これじゃモッタイナイじゃん。

ということも起こったりする。 ウッカリこんなことに気がついてしまうと、すぐさま鬼の一声がかかってしまうのだ。

じゃ、エンディング録音おわったら、
その調子で引き続きイントロ録り直ししよう。

うげ〜、なんてこった。もうすぐ休憩だと思ったのにぃ。 そういえば高校のマラソン大会で、 「あと2km」の標識を見てラストスパートをかけたら、 10分後くらいにもう一度「あと2km」の標識が出てきて脱力したっけなぁ。 う〜む、妙なものを思い出してしまった。

結局われわれホーンセクションは、休憩をまったくはさまずに、 イントロの再収録までを一気に駆け抜けた。 もっとも時間のかかった曲で、3時間くらい無休憩だったんじゃないかな?

途中で休憩をとることも勧められた。 休憩すれば、唇も休まるし、脳味噌も喜ぶかもしれない。 しかしそれ以上に、 休憩をとっている間に、演奏の感触がカラダから逃げてしまう というモッタイナイ思いはしたくない。そう考えると、 休憩をとらずに一気に録音してよかったなぁ、という気がする。


3管のバランス調整

ホーンセクションの収録が終わり、他の全パートの収録も終わり、 ミキシングを終えた演奏を聴いてみた。 ん?? 収録時の3管のバランスと、最終ミキシング後の3管のバランス、 なんか違わないか? 具体的には、ある曲ではサックスが非常に小さくなり、 ある曲ではトロンボーンが小さくなった。 ホーンセクション収録時には、ちょうどいいバランスのような気がしたんだけど?

サウンドエンジニアを務める After Hours リーダーと、 個人的にその理由を話してみた。 その結果、筆者は以下の2点が主な理由のような気がしている。

誤解のないように言っておくが、After Hours のアルバムの完成品は、 非常にいいバランスでミキシングされている(と思う)。 筆者は、たまたま収録当日のサウンドを覚えているので、 それと比較するとチョットだけバランスが違う、と思っただけのことである。 これを読んだ直後に After Hours を聴かれるアナタ、 このページに書かれたことをスッパリ忘れてから聴いて欲しい(笑)。


まだまだ内容追加中! また見に来てね。

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