トロンボーン伊藤の
ホーンセクションよもやま話集

その16:ビジュアル系バンドに入ってみた

筆者が参加しているバンドは、 ルックス的には地味なバンドが多いのだが、 ひとつだけトンデモナイ例外がある。 筆者と面識のないアナタ、筆者が参加している Earth, Wind & Fiber を見て欲しい。 名前からも想像がつくかと思うが、Earth, Wind & Fire の完コピバンド、 いや「モノマネバンド」と言ったほうがいいかもしれない。 このページでは、EWFiber のファンの声にお応えして(?) このバンドにまつわるエピソードを書き連ねたい。

なお、念のため、 この項目は大半の管楽器奏者には何の役にも立たない情報である ことを断っておこう。

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数の暴力(笑)

筆者の参加している Earth Wind & Fiber というバンドについてヒトコトで説明すると、 19人編成のバンドで、Earth Wind & Fire を完コピしている というバンドである。 このバンド名、早口で言ったら、本物と発音がほとんど同じである。 ちょっと反則じゃなかろうか?

それ以上にこのバンドが反則と言われている点は、なんといっても 「19人編成」 というメンバー人数である。 2,3人のユニットがライブハウスで多数みかけるようになった昨今、 この人数は驚異的である。メンバー構成はというと、

男性ボーカル3人、女性ボーカル(コーラス)4人、
ホーン4人(A.Sax, B.Sax, Trp, Trb)、
ギター2人、ベース1人、キーボード2人、
パーカッション2人、ドラムス1人

である。 これを見て「ヒトクチに19人というけど、こうして書き並べてみると、 けっこうバランスのいい編成じゃん」と思ってしまった自分が恐い。 明らかに感覚がズレている(苦笑)。

この人数のおかげで大変な思いをすることは多い。 まず、この人数を収容できる練習場所からして、滅多にない。 東京23区内の某スタジオを使って練習しているのだが、 部屋が大きいので、練習に1時間5500円もかかってしまう。 「人数で割れば大した額じゃだろう!」と思われるかもしれないが、 19人全員そろうようにスケジュール調整をすること自体が困難 だったりするので、もっと安いスタジオがあるならそれに越したことはない。

ライブ当日も大変である。我々も大変だがスタッフも大変だろうと思う。 バンドごとに控え室をわけて用意してくれる親切(?) なライブ企画に何度か出演したが、 対バン5バンドが控え室で一室を利用して、 残りの一室を我々19人と別のもう1バンドで使った、 ということがある。 バンド数では「5対2」ということで、かなり不公平感があるが、 人数でいうとほぼ互角である(本当)。 我々のせいで5バンド一室にさせられた方々も気の毒だが、 どちらかといえば我々と一緒にさせられた1バンドの方がもっと気の毒である。

ステージリハーサルも大変である。 19人ぶんの配線となると大変な時間がかかる。 我々だけ10分くらい余分に時間を用意してくれるライブハウスもあるが、 それでもリハーサルの時間がオーバーになりがちである。 これが原因で、別のバンドの人たちから 「あそこのライブハウスのPAは使えない」 などと言われてしまうことがあったとしたら、これまた気の毒なことである。

当然ながら、本番のステージも狭いことが多い。 ホーンセクションはステージ端にいることが多いのだが、例えば モニタースピーカーから自分の耳まで 5cm とか、 ステージに両足のせきれないので、 右足を脇のスピーカーの骨組にのせて1時間演奏した ということがある。 後者のライブの話になると「あの当時のメンバーは18人だったけど、 ステージには17.5人しか載ってなかったんだよ」と説明することもある(笑)。

読者の意見:
EarthWind&Fiber というバンド、おもしろそうですね。 自分も企画バンドで殿様ストッキングス2000というバンドをやりました。 70年代ディスコサウンドのバンドでEW&Fの曲もやりました。 ただ人数はこちらのほうが上です。 なんせバンドメンバー30人いましたから。(笑) ドラム2人、ベース1人、ギター2人、キーボード4人、ホーン7人、 ボーカル2人、コーラス3人、ダンサー9人。 (ドラムとキーボードは入れ替わりで、余りは踊るので、 ダンサーが常に12人くらいいましたけど。) アフロヘアーにかならずどこかにストッキングをつけている(はいている) というへんちくりんな格好でした。

筆者より:
さ、さんじゅうにん!? 負けた ... 一体どこでライブをされたのでしょうか?


Earth Wind & Fire をコピーするということは

さて、このバンドの Earth Wind & Fire のコピーぶりは、 このホームページ を見るだけでも想像がつく通り、 かなり徹底している。メンバーは 全員アフロ着用、黒塗りが原則 である(なぜか音楽より先にそっちの話になる)。 メンバー一同、ステージに出演する以上、 このくらいの身だしなみをするのは当然と思っていたりするから恐ろしい。 この「アフロ&黒塗り」を準備する控え室の光景は、 このバンドのドラマーが執筆するエッセイ 「音楽と私」の第15回 に掲載されている。面白いので、ぜひ読んで欲しい。

そういえば、以前に出演したライブで、 メンバー全員白塗りのハードロックバンドが対バンになった ことがある。 この控え室の光景は実に面白かった。 19人の黒塗りに追いやられるように、 白塗りの4人は部屋の両隅にある鏡に向かってメイクをしていた。 この光景を見た筆者は、つい 「これがオセロゲームだったら、19対4で我々黒組の勝ちだ」 などというクダラナイことを言ってしまったのだが、別のメンバーに 「いや、彼らが四隅を押さえてるから、逆転されるぞ」 などと切り返されてしまった(これまたクダラナイ)。

アフロ・黒塗りだけでなく、このバンドは衣装にも気合いが入っている。 似てるんだか似てないんだかわからないけど、 とにかくギラギラと目立つ衣装がやたらに多い。 あるメンバーはユザワヤ(東京で一番有名な衣料素材店) で材料を買い揃えて衣装を手作りする。 あるメンバーは新宿や原宿の衣装屋を徘徊して掘り出し物を探してくる。 あるメンバーは海外出張先で本場の衣装を持ち帰ってくる。 あるセクションは「んな衣装が4着もあるのか!?」 というような衣装を集団購入してくる。 とにかく、メンバー各者とも、本番当日まで衣装選びに余念がない。 そのため本番当日の控え室では、メンバー同士で衣装を見せ合いながら 「すげぇ」「やられた〜」「負けた〜」という会話が飛び交ったりする。 そう、このバンドでは 衣装選びは競争・衣装選びは勝ち負け なのだ。

このバンド、最近では本番のステージングも徹底している。 「今回はox年ab会場でのライブをコピーする」と決めて、 極力ライブ通りの曲順で演奏するだけでなく、 振り付けや演出までライブの完コピを試みる。 オープニングで19人全員が楽器をおいて一斉に踊ったこともあった。 アフロ・黒塗り・ギラギラ衣装の19人がひとつになって踊る姿、壮観である。 曲中の振り付けも徹底的にコピーしている。これも壮観である。 Earth Wind & Fire の某ライブで、ダースベーダーに扮した役者(?)とメンバーが、 演奏中にチャンバラするという、まことにもって意味不明な演出があるのだが、 これもそのまま同じ構成で演じたことがある。 ただし、このバンドが演じると、どうしても調子に乗って 「コミックバンド風な寸劇」になってしまうのだが、 そのネタを目当てで来るリピーター も多数いたりする。


ホーンセクションも完コピだ!(できる範囲で ←弱気)

さて、このページは「ホーンセクションよもやま話集」である。決して Earth Wind & Fiber の宣伝のページではない(爆)。 というわけで、前置きが長くなったが、そろそろホーンセクションの話題に移ろう。

結成初期の Earth Wind & Fiber は、 主に Eatrh Wind & Fire のスタジオ版をコピーしていた。 彼らのスタジオ版の演奏、特に代表作 「September」「Boogie Wonderland」を発表した頃のサウンドは、 それはそれは賑やかで鮮やかで華やかである。 実に多くの音が絶妙のバランスで処理されている。 ホーンセクションも音数が多い傾向にあり、 「1曲まるまる吹きっぱなし」という曲も多い。 しかし、これをまるまる全部演奏していたのでは、かなり体力を消耗するし、 ライブでは聴感上ややシツコク感じるような気がする。 何度か練習やライブを重ねた結果、筆者らは徐々に、 反復する同じフレーズの1回目をマルマル休む とか、 本物の味をできるだけ損なわない程度に、うまく交互に吹く という方向で演奏に臨むようになった。これを我々の間では 信長の鉄砲隊方式 と呼んでいる(本当)。

筆者の経験からいって、 Earth Wind & Fire のホーンセクションのコピーは、 譜面ヅラだけみても、それなりに体力を使うほうだということがわかる。 まず、なにしろフレーズが派手である。 そして、同じフレーズを反復的に吹く時間が長い。 しかも、我々 Earth Wind & Fiber には、他にも体力消耗の要因がある。 皮膚呼吸を否定するコスチューム、 デスクワークな日常生活に不釣り合いなステージング、 そして、寄せる年齢(爆)。 そういう理由もあって、少なくとも筆者は Earth Wind & Fiber の本番では体調のことを考えるようになった。 たとえば、筆者は酒好きな人だが、水分不足を恐れて、 基本的に Earth Wind & Fiberのライブ前にはアルコールは摂取しない (他のバンドならいいのか? というツッコミは却下)。

さて、「最近では Earth Wind & Fire のライブの構成や選曲をそのまま完コピしている」 ということを書いた。 筆者たちホーンセクションの最近のチェックぶりも、 我ながらマニアックだと思う。どのくらいマニアックかというと、

「82年ライブの Fantasy の前奏は、 1小節おきにテヌートとスタッカートで吹く」

「スタジオ版の Jupiter のイントロのフレーズは最高音は Bb (フラット) だが、95年版ライブでは同じフレーズの最高音に B (ナチュラル) が混じる」

「95年版ライブの Boogie Wonderland は、サビ7小節めの16分音符が 1個多い」

「95年版ライブの Let Your Feeling Show は、 サビのフレーズの吹き始めにノイズ風の装飾音符が入る」

というくらいである。 どうだ、マニアックだろう(説明になってないか?)。 きっと、こんな細かいことに気がつくお客さんなんて、 ほとんどいないんだろうけど、でもここまでやってしまうと、 徹底的に本物に近づきたくなってしまうものなのだ。 彼らも長年の演奏生活の中で、徐々に自分の曲を進化(?)させているのである。 その過程を完コピによって学ぶことも、それ相応の意義がありそうな気がする。 そういうわけで、筆者らのホーンセクションでは、 同じ曲の楽譜がライブバージョンごとに何パターンもあったりする。 筆者らの完コピ道も、なかなか手間のかかる道のりである。

ついでに余談をひとつ。 Earth Wind & Fire のアルバムでは一時期、 ホーンセクションはわざとユックリ演奏して録音し、 それを速く再生してミックスする というワザを使っていたのをご存知だろうか。 そのエピソードを初めて聞いた筆者は、こともあろうに、 あいつら、ひょっとして、 自分でも吹けないくらい音の高いフレーズを書いちゃったから、 ユックリ演奏してお茶を濁してるのか!? しかし、それライブではどうすんの!? などと考えてしまったのである。 あ〜神様仏様アース様、アサハカな筆者の邪推をお許しください。 どうやら、その技術のココロは ユックリ演奏して速く再生したほうが、カッコいい音色が得られるから ということらしい。 意外なことだが、金管楽器は低音のほうが音色が豊か(倍音が多い) ので、低音で演奏したものを高音再生すれば、 音色の豊かな高音が得られる、ということのようである。


ビジュアル系ゆえのライブ本番の誤算

このバンドのホーンセクションには、アフロ、黒塗り、 といった基本アイテムのほかに、 銀タイツを着てマントを羽織る というユニフォームがある。 このルックスにまつわる失敗談はいくつかある。 ここでは、筆者のトロンボーン奏者ならではの失敗談を思い出してみる。

その1:マントが重いのでスライドワークが低下する
バカにならない重さである。 両肩からマントの重みに突っ張られたせいで、 意外なほど右手の動きは鈍くなった。 ちゃんと前日にマントを着用して練習したハズだったのになぁ(本当)。 このバンドのコピーしている曲は、 トロンボーンにも容赦なく16分音符の応酬があるので、結構キツかった。 ちなみに、「重い」だけでなく「狭い」という感想もあった。 ホーンセクションメンバーの75%の人(4人中3人って書けよ) から「ステージが狭く感じた」という証言をとってある。

その2:筆者だけ右腕が汚れる
トロンボーンのスライドを動かす際に、 どうしても顔と接触するので、黒塗りのドーランが右腕についてしまうのだ。 間違いなく、ホーンセクションの衣装の中で、 筆者の右腕だけが極端に汚れているハズである。 ひょっとしたら、筆者の顔のメイクも左右非対称(右だけ剥がれている) のかもしれない。せっかくのりりしいメイクがぁぁぁ(笑)。

その3:ドーランを塗りすぎると音感に影響が出る
どうやら、過度のドーランで唇周辺の張力の感覚が変わってしまい、 音程が制御できなくなったらしい。 あるライブで、筆者の音程が異常に高くなるというアクシデントがあった。 バンドのメンバーには、この感覚の違いを克服するために、 日ごろの個人練習から唇周辺にだけメイクを塗って楽器を吹け、 と言われてしまった(誰が実践するか!)。 ところでそのルックス、カールのおじさんみたいですね(わかるかな?)。 さらに余談だが、このバンドの本番では、 メイクがマウスピースにくっついて、マウスピースが非常に汚くなる。 洗い忘れると次回の練習のときにガックリくるものだ(笑)。

さて、トロンボーン奏者の皆さん、参考になったであろうか? (ならないだろうなぁ)

読者の意見:
(^◇^)を塗りたくってとろんぼおんを吹くと、右腕が汚れるとの事ですが、 理解できません。 わたしもとろんぼおんを長年ふいてますが、 かおに右腕が触れた記憶が無いのです。
もひとつ、マントが重いとの事ですが、 SUPECTRUMが使用していたマントはすごく軽かったですよ。

筆者より:
言われてみると、衣装の右腕の汚れの度合いは、毎回違うかもしれません。 ホーンセクションの並び順や、ステージの広さによっても違うかもしれません。 次回のライブが終わったら、念のため右腕をチェックしてみましょう。

それからマントの重さの件ですが、我々のは外側が原色(筆者のは真っ赤!) で内側が金色というように、気合の入った2種類の布を重ねあわせてます。 ひょっとしたら、 そのぶん SPECTRUM のマントの2倍の重さになってるのかもしれません。 ちなみにマントはどのくらい羽織りましたか? 一見軽くても、1時間羽織り続けてたら徐々に重さを感じるようになった、 ということもあるかもしれませんね。


まだまだ内容追加中! また見に来てね。

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