トロンボーン伊藤の
ホーンセクションよもやま話集

その4:ホーン譜の作成手順(原曲にホーンがある場合)

原曲に管楽器が入っている曲のコピーを演奏する場合には、 その演奏を耳コピして、そのまま楽譜に書きうつしている。 また、筆者の周囲のオリジナル曲作曲者の多くは、 ホーンのフレーズを作曲者自身が考えてくれている。 しかも、PCによるデモ演奏の中で、そのフレーズも演奏してくれている。 筆者は、そのデモ演奏を耳コピして手書きで楽譜を作成することもある。 このページでは、その作成方法を概観する。

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1. 曲の構成をメモする

たとえばこんな構成の曲があったとする。

前奏
(1番)Aメロ 〜 Aメロ 〜 Bメロ 〜 サビ
間奏
(2番) Aメロ 〜 Bメロ 〜 サビ
ギターソロ
(3番) Bメロ 〜 サビ 〜 サビ
エンディング

この全曲を繰り返し記号なしで楽譜にしたのでは、 同じような音符を何度も書くことになる。 そこで筆者は、とりあえず最初に何回か曲を聴いて、 どのように繰り返し記号を使うか計画してから楽譜を書くことが多い。 ただ、ホーンの場合、 メロディやコード進行は同じなのにホーンの動きだけは毎回違う という、楽譜書き屋泣かせなケースも多いので、 必ずしも繰り返し記号の多用によって楽譜書きがラクになるとは限らない。

読者の意見:
ワタシの場合、人のために書く譜面は、 「なるべく複雑な繰り返しをしない」ことを心がけています。 多くても1カッコ、2カッコ、D.S.、coda程度にとどめます。 また、繰り返し記号の代わりに8本線を引いて、 「(A)8小節くりかえし」などと表記したりします。 こうすると、譜面を書くときの音符数はかなり多くなってしまいますが、 演奏中に飛ぶ場所がわからなくなってパニックになるのを防ぎます。

筆者より:
ワタシも考え方はだいたい同じですね。 ハイテクな反復記号を駆使して、 感心なまでに記譜上の小節数を最小化している知人がいますが、 ワタシはローテク派(意味不明)というか、 そもそもハイテク楽譜を書いても演奏時に自分で読めない(泣)ので、 反復記号の入れ子構造はホドホドにしています。 そういえば高校生のとき、漢文の返り点が苦手だった(関係ないか)。


2. ホーンの最高音・メロディ・ベースの音を先にとる

よく知人に 「ホーンなんて何パートもあるのに、よく全部の音が聞こえるよね」 と言われる。 大きな声では言えないが、 実は筆者には全部は聞こえない(爆)。 ホーンの最高音である 1st Trumpet は素人でも聞き取れる。 筆者の場合、自分が演奏している Trombone は、わりかしよく聞き取れる。 しかし、自分と縁のない Saxophone が複数人数いる曲の場合、 たいてい全部を正確に聞き取れることはできない(いばるなよ)。
そこで、筆者は以下の手段で音をとって楽譜にしている。

  1. メロディとベースを先に聴き取り、コード進行をアバウトに把握する。
  2. ホーンセクションの最高音パート (たとえば 1st Trumpet)を聴き、フレーズを丸ごととる。
  3. 最高音以外のパートについては、聴き取れるものは極力楽譜にするが、 聴き取れないパートはコード進行からハーモニーを類推して書く。 原曲のホーンセクションより自分達のほうが人数が多いときも、 同様な考え方で和声を増やすことが多い。

きっと正確な原曲通りのハーモニーは書けていないのだろうけど、 めったにメンバーに怒られることはないので大丈夫だろう(おいおい)。 むしろ、 原曲完コピよりも、自分達の編成にあったボイシングを選んだほうがいい、 という場合もある(編成や曲目にもよるのでイチガイに言えないが)。 もっとも、 キッチリ気合いを入れてホーン全音を聞き取って丁寧に楽譜を書いたのに、 あるメンバーがその通りに吹いてくれなくてガッカリした、 という経験も以前にはいろいろあったが(泣笑)。

ちなみに、このへんの力の入れ具合も、編成や曲目によって大きく変わる。 完成度重視でミッチリ楽譜を書くようなバンドにおいては、 できるだけしっかりと耳コピをして、ボイシングも練ってくる。 それに対して、練習ナシ一発勝負のセッションなどの楽譜をつくるときは、 たいていの場合準備時間がないし、完成度を求めてもしょうがないので(笑) 最高音以外の音なんて耳コピしない場合のほうが多いかもしれない。 結果的に、同じよう曲の楽譜を書いてるのに、

マジなバンド向けの楽譜は1曲2時間かけて書き、
セッションの楽譜は1曲40分でサラリと書き上げる

というような状況になるのだった(笑)。


3. 練習しながら直す

以前にも書いた通り、筆者の所属しているホーンセクションは、 セクション練習を時々する。正直いって、

書いているワタシ自身が、ホーン練習中に
楽譜の一部を書き直すことを期待している

くらいなので、この場で楽譜を修正することは多い。 ごくまれに、原形をとどめなくなって最初から書き直すこともある。
よく考えてみると、筆者の場合、仕事で書いているプログラムや ドキュメントも、あとで書き直すことを最初から期待していて、 ごくまれに全部書き直すことがある。 そう考えると、楽譜書きという作業にも性格がにじみでているような 気がする(本当かな)。

読者の意見:
編曲のお話が読んでて、うんうん、分かる分かるって感じで凄く良かったです。 私もDTMで編曲してうちわの発表会で演奏したりするんで。 耳コピやアレンジなんかの苦労は、DTMだけに限った話じゃないんだなあ、 と当たり前の事に感心したりして何か妙に嬉しくなりました。

筆者より:
ホーンセクションって、悪く言えば、 メロディーやリズムが先に決まってる曲に「後づけ」 するような場合が多いですよね。 音楽を徐々に積み重ねて作る DTM とは共通のノウハウがありそうな気がします。

読者の意見:
以下の耳コピ術は、完全スコアを起こす場合ですが、 ホーンだけの耳コピにも応用できると思います。

まず、ベースの音をコピーします。 これがきちんと出来ていないとコードの特定が難しいので、 確実に取って下さい。 たまにベードラとタイミングがバッチリ合ってしまうと聞き取りにくいことがあります。 そんなときは前後のコード進行から類推して後で確認します。

次にサウンドからコードを拾います。 ベースがルートに行っていない場合もあるので (Gm7/Cとか、場合によってはF/Ebとか) どうしても聞き取れない場合は構成音を洗い出して前後の脈略でコードを当てはめます。 聞き慣れないサウンドの時は、ベースがルートに行っていないことを疑って下さい。

コードが決まったら、次はメロディラインをコピーします。 次はセクションの最低音です。これで、 どう言うハーモナイズなのかが見えてきます。4 管セクションでは、4way Close, Drop2, Drop3, Drop2&4 等、 決まったハーモナイズがあり、殆どの場合、これに当てはまると思います。 細部では、アプローチノートの処理やテンションの扱い、 Last Rythmic Attack 等で単純にコードトーンを割り振ったものではないので注意がいります。 きちんとしたアレンジではハーモナイズが一連のフレーズの中であちこち変化することは殆どないので、 メロとコード、音の使い方さえ分かれば後は一本道だと思います。

以上は渡辺貞夫さんの「Jazz Study」に詳しく述べられています。 音の使い方は色々ですが、これは近代和声の基本のようなものですから、 ホーンセクションでアレンジや耳コピをしている方にお勧めします。 前半のコードの基本部分だけでもマスターして下さい。

筆者より:
丁寧な解説、どうもありがとうございます。 筆者が大雑把にしか書かなかった部分を、とても細かく解説していただき、 大変助かります。 筆者もベースは最初にとることが多いのですが、 コードをテンションまで全部ききとれないときは、 先にメロディをとって、メロディとの音程差からコードを類推することが多いです。 それとは別に、ファンクなどにありがちな「ワンコードもの」 も耳コピが難しいケースが多々あるかと思いますが、 このような楽曲の耳コピ術はあと一工夫いるかもしれませんね。 これについては、後日書き加えようと思っています。


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