トロンボーン伊藤の
ホーンセクションよもやま話集

その5:ホーン譜の作成手順(原曲にホーンがない場合)

原曲にホーンが入ってない曲をバンドでやるときに、 「ホーンのフレーズを創作して演奏してくれないか」 と頼まれることがある。 筆者は、そのような依頼にどのように応えているのか。 その方法と感想をこのページで概観する。

このページに関する感想、意見、情報提供、宣伝などは、 こちらの掲示板 でも受けつけております。お気軽に書きこんでください!


原曲に管楽器が入っていない曲の場合には、自分でホーンの フレーズを創作して、ホーンの入っていない演奏にその フレーズをねじこめる、という考え方をする。

読者(金管楽器奏者)の意見:
私も、年に2、3曲ですが、会社の同僚のバンドにTpで参加します。 で、もともとホーンの無い曲に、まさに「ねじ込む」のですが、 結構苦労します。でも、 Tp1本だけなので自分の実力に合わせて作れるのがメリットと言えばメリットでしょうか?^^;。

筆者より:
この「自分の実力に合わせて作れるのがメリット」という点、 いいポイントですねぇ。
筆者は多くのバンドに参加して、 管楽器奏者が書く譜面も非管楽器奏者が書く譜面も、たくさん消化しているのですが、 一般的には管楽器奏者の譜面のほうが奏法上も無理がなく、 しかも吹いていて気持ちいい(笑)ことが多いのです。 これはまさに「実力に合わせて作れる」というメリットの賜物でしょう。
でも、たまには非管楽器奏者の書く無茶な(笑)譜面に接することで、 自分の実力アップの好機にもなるし、フレーズのマンネリ防止にも役立ちます。
というわけで筆者は、管楽器奏者アレンジ7割、非管楽器奏者アレンジ3割、 というくらいのバランスで演奏するのがいいかなと思ってます。

読者(トロンボーン奏者)の意見:
ホーンセクションも会社のロックに頼まれてやったりしてます。 けっこう共感を感じますね。 ホーンの入ってない曲にアレンジもやりました。 会社の人が作ったコテコテのロックだったんで苦労しました。 こちらを読んで、やはり同じようなとこで悩むんだなあと思いました。(^_^;)

筆者より:
ロック系の曲へのホンセクパート追加は、 筆者もやったことがあって、難しいと思いました。 なにが難しいんでしょうねー。 少なくとも「ギタリストはシャープ系のキーが好き」 という点では相容れませんが :-) きっとそれだけではない何かがあるんでしょうねー。

ちなみに「原曲に管楽器が入っていない曲の場合」とは、 具体的には以下の2通りであると考えていいだろう。

前者の場合、実は作曲者はホーンセクションを入れたかったのだ、 というようなタイプの曲も多いので、わりかし創作が面白い。 問題は後者である。ホーンがいなくても完成された曲なので、 すでにフレーズをねじこめるスキがない場合が多い。 それでもスキを探して、そのスキにあったフレーズを苦しみながら 創作するか、他のパートと同じ動きを重ねて縁の下の力持ちに徹するか、 そのどちらかになることが多く、産みの苦しみを味わうことになる。

いずれにしても、上記のような、原曲にホーンセクションが入ってない曲の場合、 ホーンのフレーズを創作することになる。この創作の手段として、

というあたりが考えられる。個人的には、 ジャズ屋さん言うところの「現場主義」的な後者の手法にあこがれたりもするのだが、 練習時間の不足や力量不足などもあって、なかなか実現できていない。 よって、参加しているほとんどのバンドでは、 前者の通り初回の練習までに楽譜を書いている。 ただし、初回の練習までに書いた楽譜を完成品としてとらえるのではなく、 練習中の手応えで随時書き換えるようにしている。

これらの曲目において、筆者は以下のような手順で作業をしている。


1. 曲の構成をメモする

これは前述の通りなので省略。


2. 何回も聴きながら唄ってみる

よくジャズ系の演奏者が 「アドリブが上手くなりたかったら、日頃から唄いなさい」 というのを聞く。 どうやら、ホーンセクションのフレーズを考えるのも、 それに似ているような気がする。つまり、

「カッコいいフレーズを考え出したかったら、日頃から唄いなさい」

ということなんじゃないだろうか? という気がするのである。 そこで筆者の場合、もらったテープを通勤電車の中で聞きながら、 ホーンの入れられそうなスキを探し、 そこを重点的に聞きながら頭の中でフレーズを唄ってみることで、 気に入ったフレーズを見つけていることが多い。
しかし問題点が2つある。 会社に到着するまでにフレーズを覚えていないことが多いこと、 それから、つい声が出して唄ってしまうこと。


3. 楽器で弾きながらフレーズを書く

フレーズが決まり次第、それを楽器で弾いて音を確認し、 楽譜に書き込む。 思いついたフレーズは、たいてい一発で楽譜にできるのだが、 ときどき思った音が弾けなくて時間がかかることがある。 通勤電車の中でフレーズを思いついた場合、 会社に着くやいなやキーボードを弾いたりすることもある。 筆者は早起きな人なので、 コアタイム10時からの職場なのに朝8時に出勤したりするのだが、 フレーズを思いついた日は演奏に夢中になってしまい、 早く出勤した意味がなくなっていたりする。


4. バンドの音を思い出しながら微調整する

3. までの作業で、一応楽譜は完成するのだが、 そのフレーズが本当にバンドにマッチするのか、ということも 考えなくてはならない。場合によっては、一部を書き直すこともある。
筆者が考えているホーンセクションのフレーズの定石とは、

メロディのスキ間をぬうように、
ギターやキーボードの動きとぶつからないように、
キメるところはリズムパートと呼吸をあわせて、

ということである。 この心得を満たすためには、バンドのメンバーにある程度同調した フレーズ作りをするに越したことはない。 よって、この「バンドの音を思い出しながら」という作業も、 バンドによって変わってくる。 以下、実例をあげながら、微調整のようすを示す。

最近ゲスト参加したバンドSの場合: このバンドは、楽譜を書きやすいバンドの典型だったと思う。 リズムを担当するドラムとベースは、正確でキメがはっきりしている。 ハーモニーを担当するギターとキーボードは、 フレーズを弾くところとバッキングを弾くところの弾き分けが明確で、 どの小節ならホーンが目立って差し支えないか、というのがわかりやすい。 ボーカルの人がメロディを書くので、 「この小節にホーンを」という打ち合わせもスムーズにできた。 ホーンの楽譜作成者にとって理想的なバンドといえよう。ぱちぱち。

月例ペースでライブを消化するバンドUの場合: このバンドは基本的に1人のアレンジャーがすべてのパートを書くのだが、 たまたまアレンジャーが多忙だったので1曲だけホーン譜を書いた。 このバンドもリズム主導で、 かつギターとキーボードは弾き分けが明確なので、 フレーズは比較的カンタンに思いついた。 また、ボーカルの人はバックの動きにほとんど注文をつけないので、 書き直しも一切不要だった。 結果的には楽譜を書きやすいバンドだったように思う。

ライブ2回で解散予定のバンドCの場合: このバンドは難しかった。 なにせボーカルが4人いる(どこのバンドかバレバレだな)ので、 メロディのスキなんてほとんどない。 このバンドにはキーボードが2人いるのだが、 誰がナニを弾くのか楽譜作成時にはほとんど見えなかった (キーボーディストのせいではなく選曲のせいである)。 なにを書いてもキーボードとぶつかるんじゃないかという不安から、 どこにナニを押し込めればいいのか、さっぱりわからなくなった。 といいながらも、全体的にはやや消極的に、 しかしながら少ないスキをこじあけるようにフレーズを考えて楽譜にした。 しかしその後になって、ホーンが原曲にない創作モノの曲のうち、 半分以上がボツになって演奏されなくなった(泣笑)。

ワタシが参加して3年になるバンドMの場合: このバンドは、積極的なプレイヤーが多く、 楽譜を書くのが楽しみになる非常に面白いバンドなのだが、 別の点で気がついたことがある。 このバンドは議論の活発なバンドでもあり、 かつ音楽センスが人によってマチマチである。 よって、楽譜を書いて試しに演奏してみたときに、 「このフレーズはいれよう」「いやカットしよう」 「もっとホーンにたくさん吹いて欲しい」「いや疲れるから止めよう」 というような応酬が多かった。 こういう議論自体は、非常に勉強になっていいのだが、 きっと楽譜を書く前からでもできる議論であるに違いない。 よって、こういうバンドの場合は、 十分に打ち合わせをしてから楽譜を書き始めるほうが、 ムダがすくなくていいような気がした。

読者(サックス奏者)の意見:
ホーンのパート作成には大まかに分けて3つのパターンがあります。

(1)スプレッド
コードトーン(又はテンション)で塗りつぶすような感じです。 2管の場合は3−7−3−7と動くと甘い響きになります。 下のパートには7−3−7−3等を割り振ります。 厳しいサウンドが欲しい場合は4度または5度のインターバルを使用することもあります。 (クラシックではタブーの平行4度、5度) 3管以上ではこれにルートを加えたり、 4管以上では必要に応じてクローズまたはオープンでハーモナイズします。 スプレッドの前に導入部としてスケールなどを入れると変化が付けられます。

(2)パーカッシブ
主にスタッカートで構成される一定のパターンでバッキングします。 フルバンドやソウルなどでよく用いられます。 ハーモナイズはスプレッドに準じます。 (クラスターと呼ばれる特殊な音使いもありますが)

(3)カウンターメロディ
オブリガート、おかず等と呼ばれます。メロの邪魔にならない範囲で、 それに絡む音使いをします。管一本の場合はこれが必要でしょう。 最も単純なのがメロの追っかけ。 スケール、分散和音、 音のジャンプなどを組み合わせてフレーズを組み立てます。 この時、ディレイドレゾルブアプローチノート、 テンションレゾルブ等を使うと特徴的なサウンドが作れます。 どのようなフレーズでも、メロとのインターバルが最も重要です。 またテンションを使用する場合はピアノ、ギターとの関係も重要で、 勝手に♭9、♭13等を使うと音がぶつかりますから、 事前の打ち合わせが肝心です。

最後に、余り隙間を埋めすぎると全体にベターッとした感じになる場合もありますので、 埋めすぎには注意しましょう。休符も立派な音符の一員で、 隙間や音のない部分ではありませんから。

管楽器のおかずは、サビ前、曲のクライマックス、 エンディングの盛り上がり等に入れると効果的です。 全曲通して吹きまくると大概「うるさい」って嫌われます。

筆者より:
参考になる意見、ありがとうございます。 筆者のアレンジの好みとしては、スプレッドは少なめですね。 ロングトーンが多くて自分が疲れるから(笑)というのもありますが、 たまたまキーボードの2人いるバンドに参加した機会が多く、 持続音系のコードトーンはオルガンやストリングに任せる癖がついたのだと思います。 また、パーカッシブなフレーズが好きで、よく多用するのですが、 ハモリにするかユニゾンにするか迷うことが多いですね。 最初ユニゾンで書いたくせに、結局みずからハモッてしまったとか、 逆にハモリで書いたけど「ユニゾンのほうがインパクトあったかも」 と後から思いなおすこともあります。

次のページへ
前のページへ
目次へ